風水とは?
今から4000年ほど前に中国で誕生した環境学のことです。それより少し前の中国は群雄が割拠し、どこに本陣を構えて、要塞はどこに作り、といった戦術のための奇門遁甲術といった環境学がありました。それがもう少し状態が落ち着いてくると、都はどこにおくべきか?良い環境で作物ができるようにするにはどうしたら良いか?治水をするにはどの方角から工事をしたら良いか?といったように、国づくり・都市づくり・皇帝の宮殿作りのための環境学=風水が盛んになりました。
陰陽五行説と風水学
水、土、火、木、金の「五行」はすべての「物質」「エレメント」を含む概念です。物質はこの五行に集約されるものと古代中国の賢人達は考えていました。また、五行に含まれない物質ではないものを「気」と呼び、これには「陰陽」の二種類があるとします。
これら五行はそれぞれを生かし(相生と言います)、あるいはそれぞれ破壊する(相剋と言います)関係にあります。例えば水は火を消します。しかし、水は木を育てます。建物や川や山といった自然の造形を配置した場合に理想とされるバランスを求めて当時の中国の学者が最先端の環境学を競って作り上げて行きました。
環境学から総合科学としての風水学へ
風水学は方位学や九星気学の考え方の良いところも柔軟に取り入れました。さらに五行説は色、味覚、食物の分類にも用いられ、気功などの東洋医学とも結びつきを強めたことから、風水も隣接する分野を吸収して総合科学の様相を帯びるようになります。そして風水の担い手も皇帝・時の政府の高官達からインテリ層、商人、農民に長い年月を経て広がり、現代では社会階層に関係なく風水は広がっています。
たくましい華僑と風水
皆さんは華僑という言葉をご存知のことと思いますが、華僑=中国系の移民はアジア・アメリカ・ヨーロッパ、最近ではアフリカにも広がって活発な経済活動を行なっています。どこに移民をし、どこで店を持ち、街を作り、といった計画は多くの場合風水学に基づいています。シンガポール・マレーシア・あるいはタイなどの華僑系のショッピングモールも、噴水を配して水の気を取り込んだり、あるいは西の方角に鏡、東に金属のオブジェを配したりする場合が多いですが、これらは風水に由来しているものです。横浜やサンフランシスコのチャイナタウンも風水に基づくまちづくりや祠・廟の配置をしています。
現代のインテリア風水・お財布風水
今では「風水財布」「風水カーテン」といったように、運気を上げる方法として持ち物やインテリアにも当たり前に風水が取り入れられています。庶民の風水は街を作るほどのスケールは持てませんので、持ち物・インテリアで少しでも自分の環境を整えるための方法として利用されています。
しかし、元はもっとスケールが大きいまちづくりや国づくりのための環境学であったように、持ち物もインテリアももっと大きい環境の中で考えることも必要です。香港やシンガポールの富裕層の風水は土地取得やビルを建てる際に欠かせないものですが、風水のバランスに則って作られた建物全体とインテリアの調和をどう取るかを考えることも風水の求める「最適のバランス」を作ることには役にたつでしょう。反対に風水のバランスが崩れている環境であれば、インテリアや持ち物で金の気を補うとか、火の気を持つものは避けておくなどの工夫ができます。
まとめ
風水は最適のバランスの中でまちづくりや国づくりを行うための環境学に由来しているスケールの大きい考え方です。お財布やカーテンにこだわるだけでなく、自分や家族を取り巻く環境の「最適のバランス」を求めるライフスタイルを取り入れることが現代の風水の知恵と言えるでしょう。